2017年1月20日金曜日

御厨地方との交流

 御厨地方とは静岡県の御殿場、小山、裾野地方のことで、富士宝永噴火(1707年11月23日~12月8日)の最も被害の大きかった地域です。3メートルにも及ぶ火山灰に覆われ、幕府から復興は不可能と判断され〝亡所″として救済の対象から外されました。時の関東郡代伊奈半左衛門忠順(ただのぶ)は窮民を見るに忍びず職責を超えて復旧・復興に尽力しました。彼の地の伝説では独断で駿府(静岡市)の国庫を開き、飢死寸前の領民に施米をしその咎を被ったとあります。
 以来御厨地方では半左衛門を不忘の恩人として今日まで篤く崇敬しています。

*詳しくは当会HPの「関東郡代伊奈氏の200年」のページをご覧ください。
http://araijuku2011.jp/inasi01/

富士宝永噴火口
   当会と彼の地の人々との交流は、一昨年伊奈神社の総代の方々が赤山源長寺に墓参に来た時から始まりました。伊奈神社の方々は2年に1度貸し切りバスで源長寺の伊奈家墓所に墓参に来ているそうです。御厨の人々の報恩の深さを知ることができます。
小山町須走の伊奈神社
伊奈半左衛門忠順公の像
そして昨年の10月7日、今度はNPO法人富士賛会議の方々が50名ほど墓参に来ました。そのほとんどが御厨在住の方でした。その中に約100年前伊奈忠順の追贈運動をした渡辺誠道氏の子孫も見えられました。
源長寺
渡辺誠道氏は父祖の遺志を継ぎ地域有志等と図り、伊奈忠順の追贈嘆願をしました。片田舎に伝わる故事に過ぎなかった無名な歴史は誠道氏等の情熱的な斡旋によって大正天皇の目に留まり、大正4年(1915)11月10日の登極礼(即位の礼)の日に従五位を贈位されています。*ちなみに同日に伊奈半十郎忠治(第3代関東郡代)も贈位されているのは、渡辺氏等の運動に触発された人々(茨城県谷和原・相馬とか川口市)の手によるものではないか?と思われます。
渡辺誠道氏の著書「伊奈氏贈位欽仰録」にある贈位証書の控え
渡辺誠道氏等に協力した人たちの中に明治・大正・戦前の言論界の巨人徳富蘇峰(猪一郎)もいました。蘇峰は当時御殿場市の青龍禅寺にこもり近世日本国民史の編纂に着手していて、誠道氏等から宝永噴火と半左衛門の故事を聴き感銘を受けたと記録されている。
大正3年(1913年)伊奈忠順没後200年を記念して建てられた「遺徳千秋」の碑(小山町吉久保水神社)。徳富蘇峰の手による格調高い漢文で彫られている。題額は徳川家達(いえさと)*徳川家16代当主。当時は貴族院議員。
 
 渡辺誠道氏は大正5年(1916年)に赤山の源長寺と赤山城跡を訪ねている。当時の源長寺は伊奈氏改易以来衰退の一途をたどり廃屋同然の状態だったそうです。また、赤山城跡も雑木林や畑に変わり、わずかに堀跡が見られる程度で往時の面影を偲ぶべきもない状態でした。
誠道氏が源長寺を訪ねた際に撮った写真。右から渡辺誠道氏、伊奈忠勝氏、山岡長治氏、竹内喜三郎氏。大正5年1月29日と記されています。(昨年の墓参で誠道氏のご子孫が持参した写真。富士山会議事務局よりいただきました)

 このメンバーは伊奈氏贈位欽仰録の編纂に協力したメンバーで、伊奈忠勝氏は寛政4年(1792年)伊奈家改易後に新規相続した半左衛門忠盈(ただみつ)より5代目にあたる。欽仰録の発刊にあたり「忠勝拝書」と揮毫をしています。
 山岡長治氏は「旧伊奈家家臣の系なるをもって常に伊奈家のために尽くされ」と書かれているので、明治維新後の伊奈家をサポートしていたことが伺われれます。また、忠勝氏と弟の隋吉氏はともに鳩ケ谷高等小学校を出ていると川口史林にあるので、伊奈家は明治中期には鳩ケ谷の山岡氏のそばに身を寄せ、山岡氏は幼き兄弟を庇護していたのではないか?と推測されます。山岡氏の子孫は今も鳩ケ谷で歯科医をしています。
 竹内氏は神根尋常小学校の第2代校長で、伊奈氏のことを研究していて欽仰録編纂に大いに助力したと書かれています。赤山山王神社には「遺徳千秋」の碑文が掲げられたいたと神根村誌にあるので、それはこの交流の証であったのです。
忠順建立の八幡宮碑。父忠常建てた八幡宮(現山王神社)を母の願いにより整備したときに建立したもの。宝永4年(1704年)11月と彫られている。奇しくも宝永噴火(宝永4年11月23日)と同じときです。

昨年の墓参は誠道氏が赤山に来てからちょうど100年の節目に当たります。伊奈家墓所の供養塔の前に欽仰録の原本と先の写真を供えて1人1人焼香をしていました。半左衛門忠順没して300年。その思いは今も彼の地で生き続けています。

先日富士賛会議さんよりご案内をいただいたのがこれです。
2月18日と19日に講演と講談、資料展も行うそうです。地元議員や学者、地元の高校の先生が講師を務めるなど市民手作りの行事です。このように市民に根付いた活動ができることを羨ましく思います。「怒る富士」の講談などぜひ聞いてみたいものです。



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